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固定価格で丸投げして仕様凍結できず破綻するパターン

一式請負にしたのに要望が止まらない。固定価格が前提にするのは変更を殺す設計。破綻の典型と深掘り事例、契約形態の判断軸を整理します。

村田 文太郎/代表取締役
  • 受託開発
  • 契約
  • 発注失敗回避

「予算を確定したいから固定価格で。」——経理と経営には優しい言葉だ。だが要件が動きやすい案件で固定価格を選ぶと、現場は仕様凍結できないまま、変更のたびに感情と追加請求が走ることになる。

固定価格自体が悪ではない。悪いのは、変更が起きる前提の仕事に、変更を前提としない契約を被せることだ。

固定価格の前提は「変更を殺す設計」ができること。できないなら、契約形態を疑う。

典型失敗

  1. 要件が曖昧なまま一式化: 「いい感じの管理画面」が無限の解釈を生む
  2. 変更を無償で飲む文化: 関係維持のため受託が飲み、後半で爆発する
  3. 受入基準がない: 検収が感想になり、終わらない
  4. 段階がない: 学習が必要な領域なのに一括固定
  5. 口頭の追加: チャットの「これもお願いします」が契約外の山になる

深掘り事例:変更協議が感情戦になった案件

匿名化した一例。社内業務システムの刷新を税抜1,200万・6ヶ月の請負で発注。キックオフ時点の要件定義書は40ページあったが、画面遷移の例外と権限の詳細は「後で詰める」とされていた。

3ヶ月目、現場部門から「この例外も」「帳票も」が週次で追加。発注側PMは「一式の範囲」と説明し、受託側は追加見積もりを提示。会議は金額の是非ではなく「誠意」の話になった。最終的に2ヶ月延伸、追加420万、双方の信頼は残らなかった。

分岐点は契約前だ。不確実な権限・帳票を準委任または段階契約にし、核のワークフローだけ固定価格にできていれば、協議は範囲の話に戻せた。固定価格は、凍結できる部分にだけ使う道具だった。

構造的原因

  • 予算確定の圧力が、不確実性の隠蔽を正当化する
  • 見積もりの安さ・一式感が採択で優遇される
  • 変更管理の手続きが契約にあっても、運用されない

回避の判断軸

固定価格が向く向かない(準委任・混合・段階へ)
受入基準と画面・IFが凍結できる利用者が触って初めて要件が固まる
変更は例外で、手続と費用が合意済み変更が価値創出の本体
スコープ外を切る権限が発注側にある「全部入り一式」を営業が約束している

次に確認すること

  1. 凍結できる範囲とできない範囲を色分けしたか
  2. 変更管理の手続と単価は契約にあるか
  3. 受入基準は検収可能な文になっているか
  4. 段階(発見→構築)に分けられないか
  5. 「一式」の中身の一覧は双方同じか

まとめ

固定価格で破綻するのは、値付けの問題というより不確実性の置き場所を間違えた問題だ。凍結できる核だけ固定し、動く部分は別契約にする。丸投げの一式は、安心に見えて最も高い感情コストを生むことがある。


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