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「とりあえず作ってください」が危険な理由|受託開発で最初に決めるべきこと

「とりあえず作って、使いながら直す」——経営者・事業責任者が陥りがちな罠と、受託開発で最初に決めるべき5つの論点を解説します。

村田 文太郎/代表取締役
  • 受託開発
  • 要件定義
  • 新規開発

「方向性は後から詰めればいい。まず動くものを作って。」

スピード重視の経営判断としては理解できる。社内プロダクトの探索では、実際に有効な場面もある。だが受託開発でこの方針をそのまま実行すると、最も遅く、最も高くなるパターンに入る。曖昧さが、そのまま請求書になるからだ。

経営者がやるべきは「早く作れ」ではなく「早く決めろ」だ。

「とりあえず作る」が危険な3つの理由

1. 手戻りコストが工数の過半数になる

方向性が定まらないまま開発を進めると、作り直しが常態化する。初期の50%が、最終的に捨てられる——これは珍しくない数字だ。

2. 開発会社との認識ズレが拡大する

「こういうものを想定していた」が双方に存在する。要件が文書化されていないと、どちらの認識も正しいと言えなくなる。

3. 使いながら直す=仕様変更の連続

「使ってみたらこうしたい」は、100%正当なフィードバックだ。だが受託開発では、それがすべて追加費用になる。

深掘り事例:先に画面を作って半年戻った案件

匿名化した一例だ。新規B2Bツールで、「先に画面を触れる状態にしてほしい」との指示のもと、詳細な成功条件なしに着手した。2ヶ月でデモはできた。

その後に起きたこと:

  • 課金単位が変わり、データモデルを作り直し
  • 主要ユーザーが現場担当から管理者に変わり、権限設計が無効化
  • 「使ってみた感想」が仕様変更50件超になり、当初予算の1.6倍

デモの速さは得られたが、リリースは当初より4ヶ月遅れ、社内の信頼も削れた。探索のための試作なら社内または短契約の調査フェーズに切り出すべきだった。受託の本開発に「とりあえず」を持ち込んだのが失敗の本体だ。

構造的な原因

「早く作る」と「早く決める」が混同される。決めるとは全仕様を固めることではない。捨てるものを決めることだ。捨てないまま作ると、すべてが変更候補になる。

最初に決めるべき5つのこと

スコープの全詳細を固める必要はない。以下5点だけ決めれば、開発を安全に始められる。

1. 誰の、どんな課題を解くか

ターゲットユーザーと、解決する課題を1文で言える状態にする。

2. 成功の定義

リリース後3ヶ月で何を達成するか。KPIが1つあれば十分だ。

3. MVPの境界

最初のリリースに含める機能と、含めない機能。「Phase 1でやらないこと」を明確にする。

4. 判断者と判断基準

仕様変更を誰が、何を基準に判断するか。現場担当者と経営層の間に判断者がいないと、プロジェクトは止まる。

5. フェーズ分け

一発完結ではなく、Phase 1 → Phase 2 → Phase 3 と段階的に投資する計画。

「早く作る」と「早く決める」は別物

早く作る早く決める
要件が曖昧なまま着手MVPと成功条件を先に合意
手戻りで遅くなる判断が速く、開発も速い
追加費用が膨らむ投資対効果が見える

探索が必要なら、本開発とは別の短い調査・プロトタイプ契約にする。混ぜると両方壊れる。

判断軸:今すぐ作る/先に決める

状況推奨
5点が1枚に書けている開発着手してよい
「触ってみないと分からない」が主調査/プロトタイプを短契約で分離
成功条件が「動けばよい」本開発に入らない
判断者不在で変更が現場任せ判断者を先に決める

次に確認すること

  1. 課題を1文で言えるか
  2. 成功KPIは1つ決まったか
  3. Phase 1でやらないことは書けたか
  4. 変更の判断者は誰か
  5. 探索と本開発の契約は分かれているか
  6. 最初の2週間を要件整理に使えるか

まとめ

「とりあえず作る」は、探索フェーズのプロダクト開発では有効な場合もある。だが受託開発では、曖昧さがそのまま請求書になる。

最初の2週間を要件整理に使う。そこをケチると、後の3ヶ月が無駄になる。


新規開発・MVP設計の相談は、お問い合わせフォーム からどうぞ。

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